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LIFE PICTURES

「瀬戸内寂聴 99年生きて思うこと」ドキュメンタリーは、相性と誠意だ

今回は、ドキュメンタリー映画「瀬戸内寂聴 99年生きて思うこと」について語ろうと思う。

まずは、99歳まで生き抜いた瀬戸内寂聴さん享年99。ご冥福をお祈り申し上げます。

 ドキュメンタリー映画は、主人公となる取材対象者選びが要だ。映画の良し悪しは、主人公選びで80%が決まるような気がする。あとの20%が、監督の誠意だ。中村裕監督が、テレビ取材で出会い、それから17年間に渡り密着してできた作品だ。ふたりの人間関係が、映画を通じて垣間見ることができる。巷では、監督と瀬戸内寂聴さんの恋愛関係だとか、寂聴の最後の男性だとかいう意見もあるが、恋愛関係という言葉では捉えきれないと思う。

瀬戸内寂聴氏さんが、離婚して一人暮らしの中村監督を気づかったり、また中村監督も老いていく寂聴氏に寄り添いながら、優しくカメラを回している。とにかく肉を食べる、食べること寂聴さんの食欲描写が印象的だ。生きることは、食べること、元気なことは食べることとでも言いたいんだなと思う。年越しをふたりきりで過ごしながら、飲み食い語るシーンは、いい。

いとおしさがじわーーと画面いっぱいに広がってくるようだ。

いずれにしても、この映画は、中村監督と取材対象者であり瀬戸内寂聴氏との関係性がすべての作品だと思う。ここにドキュメンタリー映画の本質が潜んでいる。

 映画は、瀬戸内寂聴氏の作家としての生活と尼僧としての生活が、よく捉えられている。講演会などで人々に投げかける言葉は、力強い。映画を見る人は元気が出ると思う。沢山の言葉がある。「生きることは愛すること」 「晩節なんか汚したっていい。好きに行動すればいいの」

「いい戦争はないの」映画公開は、2022年5月。ロシアとウクライナの戦争が続いている頃だ。

この言葉は、戦争体験をしている瀬戸内寂聴さんだからこそ説得力がある。中村監督もそれを意識して取り込んだと思う。感銘を受けた。ドキュメンタリー映画は、時代を反映すればするほど価値がある。寂聴さんの伝記映画ではなく、今が表現されているのが素晴らしい。

 いいドキュメンタリー映画を創る要素のひとつが、相性。撮る人と撮られる人がどれくらい思想や哲学やその場の空間を共有できるかという、相性の問題。勿論、正解はないが相性の加減が難しい。結婚したことのある人なら、合点がいくと思う。相性が良くて人生のパートナーになった相手でも変化することがある。心が変わることがある。この変化を捉えることができるとドキュメンター映画の面白みが出てくる。この映画は、17年という歳月と変化をよく捉えている。

人が人をどこまで深く愛せるか?ドキュメンタリー映画創りも結婚生活もよく似ている。

「瀬戸内寂聴 99年生きて思うこと」
監督:中村裕 出演:瀬戸内寂聴
配給:KADOKAWA 制作:スローハンド 
©2022「瀬戸内寂聴99年生きて思うこと」製作委員会 

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