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LIFE PICTURES

行き止まりの世界に生まれて

瑞々しい感性で描くリアルなアメリカ

今日ご紹介するのは2018年に公開された、「行き止まりの世界に生まれて」。アカデミー賞の長編ドキュメンタリー部門、エミー賞にダブルノミネートされた話題作です。(公式HP:https://www.bitters.co.jp/ikidomari/ ) 残念ながら公開時に見ることができなかったので、Amazon primeで視聴しました。以前ご紹介した「フープ・ドリームス」(’94)のスティーヴ・ジェイムス監督がエグゼクティブ・プロデューサーを務めていることから気になっていた作品です。監督のビン・リューは1989年生まれ、制作時はまだ20代だったということですね…!公式HPによると「『行き止まりの世界に生まれて』はスケートビデオとして始まり、スケートボーダーの友人たちが、自分の親との関係について語る中で、パーソナルな真実を探究していく映画へとなっていきました。」と語られています。その言葉の通り、映画は「流麗」と言っても過言ではない美しいスケートボードのシーンから始まります。また、同じく公式HPに「ビンが撮りためたスケートビデオと共に描かれる12年間の軌跡」とあり、どうやら監督自身がティーンネイジャーだったことから撮り溜めてきた映像が、この映画を何とも言えず瑞々しいものにしているのです。

スケボーの映像表現を変えた歴史的名機

画像:SONY公式サイトより

ちょっとマニアックな話になりますが、ティーンネジャーの頃のビン・リュー監督が回しているカメラはSONY DCR-VX1000です。1995年に発売されたこのカメラは映像制作、特にドキュメンタリー制作に革命を起こした画期的なカメラでした。レンズ横に「3CCD」と書いてあるのが見えるでしょうか?

映像はR(赤)G(緑)B(青)という3つの映像信号で成り立っていますが、3CCDとは3つの信号を感知する機構が独立していて高画質が得られる、というもの。早い話、それまで肩に担ぐような大型カメラでしか得られなかった画質を小型カメラで撮影できるようになった!ということです。LIFE PICTURESのメンバーである野澤和之監督もフジテレビ「ザ・ノンフィクション」の放送が始まった当時(1995年)、このカメラを使っていたそうで、ハンディカメラの映像が電波に乗って放送されるというイノベーションが起きていたんですね。また、このカメラはスケードボードの世界にも大きな影響を与えたようです。こちらの記事→「スケートボード文化を変えたビデオカメラ「Sony DCR-VX1000」 発売から26年経った今でも愛され続ける理由とは?」に詳しく書いてあるますので興味のある方はぜひ!読んでみてください。

監督自身も出演する「セルフドキュメンタリー」なんだけど…

公式HPより

主人公はイリノイ州ロックフォードに暮らす、キアー、ザック、ビン(監督)の3人。人種の違う3人なのだけどこの町や、さらには家庭に居場所がなく、唯一の楽しみであるスケートボードで繋がった親友同士である。公式HPによるとロックフォードというのは「アメリカで最も惨めな町」らしく(本当かな?)、かつては鉄鋼業・自動車産業の繁栄とともに賑わった地域のようですが、現在では「ラスト・ベルト(錆びついた工業地帯)」と呼ばれる一帯の一部です。正直、海外の「荒廃地域」の話はヘロイン中毒など、日本人の感覚ではただただ立ちすくんでしまうようなハードな内容も多く、ちょっと感情移入するには厳しいな…ということもあるのでちょっと心配をしておりました。しかし本作はそんなことはありません!!前向きに生きようとしながらも、様々な事情からままならない生活を送る3人の人生譚です。個人的にスッと作品世界に入れた要因は、ビン監督とキアー、ザックの距離感ですかね。監督自身も出演しているので「セルフドキュメンタリー」だという性質もありますし、対象は親友、なんか第三者には面白くとも何ともない「馴れ合い」みたいなものが写ってしまいそうですが、そういうのがないんですよね、不思議と。お互いが親友同士なので、信頼し合っているのは空気感から伝わってくるのですが、ベタベタした感じがない。これってアメリカ人特有の距離感なのでしょうか。いや、ビン監督の手腕と考えるべきでしょうね。経歴を見ると映画やテレビの撮影部として働いていたらしく、なんかシーンによっては本当、普通の劇映画に見えますもん。「セルフ・ドキュメンタリー」っていうと皆さんは何を思い浮かべますかね?「エンディング・ノート」は感動的な作品だったし、「スーパー・サイズ・ミー」は面白かった。古くは原一男監督の「極私的エロス・恋歌’74」も名作です。ただ自分にカメラを向ける映像表現はYouTuberによるV-logの独壇場、というのが2023年の現在位置でしょう。この作品においては、ビン監督の社会、家族、人種、人生などへの深い問いかけがあるので、映画たりえてるのかな、という印象です。何というか鑑賞後「どう思った?」って話をいろんな人に聞いてみたい作品ですね。

ビン監督の次回作にも期待!

というわけで、LIFE PICTURESでは多くの人にドキュメンタリー映画を見ていただきたいと思っているので、基本的に「ネタバレ厳禁」、ストーリーについては触れないことにしていますのであしからず(笑)。私としてはたまたま生まれた場所でカメラを回してたら映画になった、という作品ではないので皆さんにオススメしたいと思います。配給元のHuluやAmazon primeで観ることができますのでぜひ!。

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