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LIFE PICTURES

ブックセラーズ

公式Twitterより
公式Twitterより

世界最大規模の本の市「ニューヨークブックフェア」

そこに集うのは本を愛するブックセラーたち。

ブックセラーとは直訳すると「本を売る人」だが、本作においては書店員やディーラーだけでなく個人的に本を買い集めるコレクター、図書館司書、美術館職員など「本を売り、買い、愛する人々」のことを指す。

社会のデジタル化で変わる本の世界。紙の本は消えゆく運命なのだろうか?

今回紹介するのは、本を愛する人々と共に過去から現在、未来の本の行方を考えるドキュメンタリー映画「ブックセラーズ」(2021)である。

Amazon prime Videoで視聴可能!

マニアにはたまらない!貴重な本が次々登場

本作には、情熱的な本マニアたちの秘蔵コレクションが満載。

ビル・ゲイツによって史上最高額(約28億4千万円!)で競り落とされたレオナルド・ダ・ヴィンチの原稿など、貴重な品や時代を超えて愛される名作がたくさん紹介されるのも、本好きの観客にとってはたまらない魅力のひとつ。

筆者自身、「不思議の国のアリス」のオリジナル原稿が登場したときには思わず「わぁ・・・」と感嘆の声が漏れた。

「不思議の国のアリス」はディズニー映画にもなった名作であり、聞いたことがない人はいないであろう有名な子供向け小説だが、実はこの小説は出版するつもりで書かれたものではなく、作者のルイス・キャロルが知人の子であるアリスという少女へプレゼントするために作った手作りの本に過ぎないものだった。

それが周囲から絶賛されたことから、出版され世界中で訳されベストセラーとなったのである。

こういった経緯から、直筆の原稿(約160年前のもの)が今も残っていることは奇跡に近く、ここまで残しておいてくれた過去の持ち主達に感謝せずにはいられない。

同じ本でも値段が変わる!古書の魅力とは?

ブックハンターの部屋(公式HPより)

本作では、希少価値が高い古書がたくさん紹介されるが、カバーの状態だけでも価値が大きく変わってくるという。

カバーなしの古書なら5000ドル、破れたカバー付きなら1万5千ドル、綺麗なカバー付きなら15万ドルにもなる。

また、初版と第5版では作者の経歴が更新されている点もカバーの面白さのひとつで、同じ内容の本を初版から最新版まで集めるマニアもいるという。

これは希少本に限らず全ての本に言えることだから、自分の手元にある古本と、現在新品で売られている本を見比べてみるのも面白いかもしれない。

作中登場する古書は装丁も凝っており、牛の革でできたカバーのもの、金や宝石で縁取られた重厚なデザインのもの、人間の骨や歯(!)が埋め込まれたデザインなどがあり、装丁の美しい古書は骨董品としての側面も持つ。

著者からの献辞(親愛なる〇〇に捧ぐとか書いてある、あれ)も見どころで、献辞の宛名が大物であるほど価値が上がるという。

また、近年では本や原稿だけでなく作者のメモなどもブックセラーたちから注目されている。

電子書籍に移り変わり、書き手もPCやタブレット、スマホを使うようになった現代において「執筆の過程や苦悩」を私たちが目にする機会は今後減っていくだろう。

本を愛する者たちは「デジタル化の時代にこそ紙の重要性を訴えたい」と語る。

電子書籍は本を殺してしまうのか?

現在はインターネットの台頭により、読書習慣が廃れてきている。

1950年代にはニューヨークだけでも約370店舗あった書店は、時代が下るにつれ減り続けている。

高齢の世代は紙の本が今後消えゆくことを悲観しているが、本を愛する若い世代は意外にもポジティブだ。

「本は長生きして私たちの物語を後世に伝えてくれるのよ」

今、私たちが生きた記録を100年後まで遺すとして、どんな手段を選ぶだろうか。

映像や音声を撮り、ハードディスクやcloudに保存する?

私たちが生きている間くらいなら、これらの記録方法は安全で長期間保存できるだろう。

しかしテクノロジーの進化は早い。100年後には今より優れた記録媒体が登場し、cloudなどの技術は過去のものとなり、再生できる可能性は低いだろう。

でも紙なら、半永久的に後世に残すことができる。

現に今伝わっている「源氏物語」などの古典文学は、紙に筆で書かれたものが人の手で書き写されながら生き残り1000年を経ても読み継がれている。「文字を読み書きする人間」が絶滅しない限りは本は失われない。

「数年前のパソコンのデータは開けないが、500年前の本は開くことができる。本が死ぬことはない」

ブックセラーは笑顔で語った。

「私たちは、物じゃなくて物語を探している」

ブックセラー達が古書に目を輝かせるのは、希少だから、高価だからという資産としての価値ではなく、本が持つ歴史を、過去を生きた人々の痕跡を求めているからである。

古本の中に「前の持ち主の痕跡」が残っているのもたまらなく愛しいという。

線が引いてあったり、ページの端にメモが書いてあったり、飲み物のシミが付いていたり。丁寧に扱われていたのか、雑だったのか。本自身がその来歴を語るのだ。

「私たちブックセラーは、物じゃなくて物語を探しているの」

ディーラーが本の買い取り相談を受けた際に、最初に出向くときは空箱を持たずに行くというエピソードがある。「大事な本を丸ごと奪いにいくような印象を持って欲しくないから」とディーラーの男性は語る。

本はただのモノではなく、人の人生に寄り添うパートナーのような存在なのだ。

1925年から続くアーゴシー書店の三姉妹(公式HPより)

この記事を読んでくれているあなたには、人生のパートナーと言える本があるだろうか。

筆者にも10代の頃に多大な影響を受け、何度も何度も読み返して表紙がボロボロになってしまった愛読書があるが、

好きな本を紹介するのは性癖を晒すような恥ずかしさを感じるからここでは言わない。

本好きあるあるとして分かってもらえることと思う。

大切な本はバイブルとして、心の中に大事にしまっておこう。

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