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詩が生まれる瞬間を捉えたドキュメンタリー
インディペンデント映画の父と呼ばれる映画監督、ジョナス・メカスをご存じでしょうか。1922年にリトアニアで生まれたメカスは、当時のソ連とナチスの間で揺れ動く母国を離れ、ブルックリンで活動を始めた監督です。彼に「映画監督」という肩書きはあまりしっくりこないかも知れません。やっぱり「映画作家」でしょうね。元々、母国で詩を書いていたメカスですが、異国の地で、しかも英語で詩を書くのは無理だと思ったのか、16mmフィルムで映画を撮り始めたと言われています。
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代表作は「リトアニアへの旅の追憶」。私は大学生の頃、まだ四谷三丁目にあったイメージフォーラムでこの作品を観ました。インディペンデント映画、というと難解な映画をイメージされるでしょうか?メカスの映画はある意味難解に見えるかも知れませんが、見方がわかれば全然難解ではありません。
16mmフィルムで撮られた映像は、まるで呼吸をするように、日々の出来事を書き留めておく随筆のように撮影されています。「おや?何だろう」と最初は思いますが、彼の映像はなんだかずっと観ていられる中毒性があります。そしてカメラが旅をしているかのようにシーンはニューヨークから母国リトアニアへ…。ああ、そうかこの人は映像で詩を書いているのかと気づいた時に、この映画の見方がわかった気がしたものです。推理小説を読むように詩を読むことができないように、サスペンス映画を観るようには、観ることができないのがメカス映画なのだと。
詩人というのは、常に詩人として人生を生きることが余儀なくされる。そういうものだと聞いたことがあります。職業であれば、オンとオフがあり、オフの時は仕事のことは忘れていいはず。でも詩人というのは「生き方」なんでしょうね。オンとオフがなく、ずっと詩人。今回ご紹介する映画「眩暈VERTIGO」は、そんな詩人の生き様を見せてくれる映画です。
ジョナス・メカスが亡くなったのは2019年。パンデミックのため、いわいる「お墓参り」に行けなかった旧知の友、詩人の吉増剛造がニューヨークを訪ねるという、至ってシンプルな物語です。
旭日小綬章を受賞、現代詩人の巨匠・吉増剛造氏ですが、その活動はとても活発で挑戦的です。こちらの記事(https://toyokeizai.net/articles/-/628082)では、そんな近況が伝えられています。
そんな吉増剛造が、メカスに向けたレクイエムをどのように生み出していくか。その詩作の様子、詩が生まれる瞬間を観ることがこんなにスリリングなものだとは!ときっと思ってもらえる作品なのでは。また個人的にはメカスそっくりのお子さんと、吉増剛造の交流のシーンはとても良かったです。
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今年、2023年の年初に下北沢K2シネマで観た作品でしたが、ずっとご紹介できずにいました。今週末から青梅「シネマネコ」さんで公開されますので、ぜひ!オススメの作品です。