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LIFE PICTURES

【感想レビュー】「音のない世界で」

ベルリン国際映画祭・金熊賞(最高賞)を受賞した監督による傑作ドキュメンタリー

 昨年末にNHKで放映された「デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士」(主演:草薙剛さん 公式HP:https://www.nhk.jp/p/ts/D6P3JWP8J7/)をはじめ、ろう者・難聴者の世界に注目が集まっています。このドラマには「ろう者・難聴者・コーダ(親がきこえない、きこえづらい親を持つ子)の役者さんが多数出演していることでも話題に。2021年製作の「コーダ あいのうた」も、コーダの女の子とその家族を愛情とユーモアたっぷりに描いた劇映画で、見応えのある作品でした。そこで今回はフランスのドキュメンタリー映画の巨匠、ニコラ・フィルベーリ監督が30年前に作った「音のない世界で」をご紹介します。ニコラ・フィルベーリ監督といえば、船上のデイケアセンターを撮った「アダマン号に乗って」がベルリン国際映画祭で金熊賞を獲得したばかりです。

「音のない世界で」の「で」の先には何がある

 「音のない世界で」はろう学校の教師、プーラン先生を導き手に話が進んでいくが、特に明確な主人公は存在しない。ろう者・難聴者・コーダを取り巻く世界が、教育・仕事・結婚と多岐にわたって描かれる作品です。これまでこの世界に触れたことのない方には「へぇー!そうなんだ」と思うような事の連続で、かなり見応えがあります。例えば手話は国によって異なるとか、知らない人の方が多いはず。
 ニコラ・フィルベーリ監督の作品は全てそうですが、ナレーションはなし、説明的な描写も最小限に抑えられているため、「音のない世界」に誘われているような感覚になります。その一方で「音のない世界で」、、この「で」の先に何があるか、それはあなたが自分で考えなさいと言われているような気にもなります。(まあ、あくまで邦題なので監督にそんな意図があったのかどうか、、あくまで憶測です)。手話で生き生きとコミュニケーションをとる人々の魅力にひたるもよし、手話を読解できない自分はどうすればいいのだろうと思う人もいるかもしれません。

手話が「言語である」こと

 劇中では、ろう学校で「発声の練習」をしているシーンがありますが、おそらくこういった教育は、今は行われていないはずです。現在、コミュニケーションに「発話」を用いるかどうかは本人の意思が尊重されているはずで、ろう者・難聴者に対して、聴者のような「発話」を押し付けるようなことはもうやめた方がいい、となったはずです。
ろう者・難聴者の教育については、斉藤道雄さんの著作「手話を生きる 少数言語が多数派日本語と出会うところで」(みすず書房 : https://www.msz.co.jp/book/detail/07974/)に詳しいです。興味のある方はぜひお手に取ってみてください。
 実は今の40代ぐらいのろう者・難聴者の方々にも、学生時代に手話を禁止されていた人は多く、東京都で「手話言語条例」が制定されてからまだ2年も経っていません(東京都福祉局:https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/shougai/shougai_shisaku/shuwagengo_jourei.html)。
まずは手話がジェスチャーではなく「言語」であり、リスペクトを持って接するべき、このことだけは周知されると良いなと思います。

2025年には東京にデフリンピックがやってくる

 いろいろなところで報道されているのでご存知の方も多いかもしれませんが、きこえない・きこえづらい人のための国際競技大会・デフリンピック。来年2025年には東京で開催されます。私は去年、東京都のお仕事で、デフリンピックやろう者・難聴者の方々を紹介する動画を作りました。
(東京都教育庁 YouTubeチャンネル:https://www.youtube.com/@user-ms4ug5rl4c

まだまだ知られていないろう者・難聴者の世界、そして手話。今回紹介した「音のない世界で」と共に↑こちらの動画も参考にしていただけると嬉しいです。

ただ「音とない世界で」は今現在、配信しているサービスはないようです。毎年、散発的に企画上映はされているようなのですが、、、
レンタルでなんとか探すか、しかないですかね、、
こうした名作ドキュメンタリーが配信されずに埋もれていってしまうのは大変もったいないので、どこか配信していただけないですかね、、、

一応、私はDVDを一枚持っているのでどうしても観たい方はご一報ください。

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